2015年3月17日火曜日

方程式z^n=rと複素平面―複素平面上に正多角形が現れる―

今回は自然数$n$と複素数$z$、それから実数$r$について
\begin{equation*}
z^n=r
\end{equation*}
という$z$の関する方程式を考えます。

実はこの解を複素平面上にプロットすると面白いことが起こります。
複素平面の復習はこちら

必要な知識
- 複素平面(詳細
- 複素数範囲での因数分解


2015年3月16日月曜日

相反方程式の解法

次のような方程式を相反方程式逆数方程式と呼びます。
\begin{eqnarray*}
5x^4+4x^3+3x^2+4x+5&=&0 \\
7x^5+8x^4+3x^3+3x^2+8x+7&=&0
\end{eqnarray*}
上から順に、4次,5次の相反方程式です。係数が左右対称になっています。
もちろん、より次数の高い相反方程式も存在します。

実はこの相反方程式、高次であっても比較的簡単に解くことができます。本稿では相反方程式の解き方を学びます。

必要な知識
- 数と式
- 二次方程式の解の公式
- 整式のわり算
- 因数定理

連立方程式の解の公式

中学では2次方程式の解の公式を学習します。3次や4次の代数方程式の解の公式を知っている人も居ると思います。

今回は、2元1次連立方程式の解の公式を求めます。

必要な知識
- 中学3年生までの数学


2015年3月15日日曜日

ベクトルの内積はなぜcosで定義されるのか。

高校の教科書では、$\vec{a}$と$\vec{b}$の成す角が$\theta$のとき、内積$\vec{a}\cdot \vec{b}$を次のように定義するとあります。

\begin{equation*}
\vec{a} \cdot \vec{b} = |\vec{a}||\vec{b}|\cos \theta
\end{equation*}

しかし、教科書にはその理由が書いてありません。



本稿では、なぜベクトルの内積がこのように定義されるのかを考えます。なお、本稿では、向きと大きさを持つベクトル量に対して、向きを持たない量をスカラ量と呼びます。

必要な知識
- 余弦定理
- ベクトルの基本的性質


逆三角関数の導入 アークサイン,アークコサイン,アークタンジェント

三角関数の逆関数を逆三角関数と言います。本稿では高校生の知識のみで逆三角関数を導入します。


必要な知識
- 逆関数についての基本的な性質(詳細
- 三角関数
- 弧度法

2015年3月14日土曜日

なぜ逆関数はf^(-1)で表すのか、なぜy=xに対称なのか。

関数$y=f(x)$の逆関数は$y=f^{-1}(x)$と書かれました。逆関数をなぜ-1乗と書くのでしょうか

また、逆関数ともとの関数はなぜ$y=x$に対称なのでしょうか。

本稿では、
1.逆関数の定義のおさらい
2.逆関数を$f^{-1}$乗と書く理由の説明
3.逆関数ともとの関数が$y=x$に対して対称であることの証明
を扱います。

逆関数という言葉は数学IIIで学習するものですが、本稿は数学IIIが未習のひとでも理解できます。

必要な知識
- 関数を$y=f(x)$と書くことになれていること

絶対値を含む関数 y=f(|x|),|f(x)|,|f(|x|)|

絶対値を含む関数が苦手な人が多いです。適当な関数$y=f(x)$に対して、

\begin{equation*}
y=|f(x)|
\end{equation*}

がどんな形になるか即答できる人は多いですが、

\begin{equation*}
y=f(|x|)
\end{equation*}

がどんな形になるか即答できる高校生は少ないです。さらに

\begin{equation*}
y=|f(|x|)|
\end{equation*}

はどういう形になるでしょう。

本稿ではこうした絶対値を含む関数を見てみます。



必要な知識
- 実数の絶対値の意味
- 三角関数のグラフの形

2015年3月12日木曜日

実数の絶対値と複素数の絶対値の根本的な違い

先日の記事でも紹介したように、虚数同士の大小を(私たちのよく知る意味においては)比較することはできません(詳細)。一方で、虚数の絶対値は定義することができます。しかし、その扱いには注意が必要です。

問.$|z-2|=1$を満たす複素数$z$を求めよ。

これに対して、ある学生は以下のように考えました。

まずは絶対値記号をはずして
\begin{equation*}
z-2=\pm1
\end{equation*}
より、
\begin{equation*}
z=1,3
\end{equation*}
実はこれは間違いです。どこがおかしいか説明できますか。

本稿では、

1.複素平面についておさらい
2.複素数の絶対値の定義を納得する
3.実数の絶対値と複素数の絶対値の根本的な違いを指摘する
4.この問いに対する正しい答えを導く

ことを行います。

必要な知識
- 実数の絶対値の定義や絶対値記号の外し方
- 複素数と虚数の定義(詳細)
- 円の方程式$x^2+y^2=r^2$

2015年3月11日水曜日

相加・相乗・調和平均による評定と学生の負担

問.進級するためには、中間試験と期末試験の平均点が50点以上でなければならない。ある学生の中間試験の点数は$x$点だったとする。彼が無事に進級するためには、期末試験で何点とればよいでしょうか(試験は100点満点とする)。

という問いについて考えます。単に「平均」といえども、その種類はたくさんあります。成績で平均をつけるとしたら相加平均をとるに決まっているだろう!と思う人が多いと思いますが、自分の大学では一部の科目において成績評定は相乗平均によって評価されます。

先日の記事では、「相加平均」「相乗平均」「調和平均」を紹介し、それらに成立する不等式を紹介しました(詳細)。これによると、同じ二つの値において、調和平均がもっとも小さく、相加平均がもっとも大きくなります。相加平均を採用した場合とそれ以外を採用した場合の学生の負担の差について見てみましょう。

必要な知識
- 相加・相乗・調和平均の関係(詳細
- 相加平均・相乗平均・調和平均の定義

2015年3月10日火曜日

相加・相乗・調和平均の関係

二つの正の値$a,b$において相加平均(算術平均)は
\begin{equation*}
\frac{a+b}{2}
\end{equation*}
と定義され、相乗平均(幾何平均)は
\begin{equation*}
\sqrt{ab}
\end{equation*}
で定義されることは高校の教科書に載っています。また、あまり知られていませんが、調和平均というものも存在し、これは
\begin{equation*}
\frac{2}{\frac{1}{a}+\frac{1}{b}}
\end{equation*}
で定義されています。この調和平均は、平均の速さを求める問題や、ばね定数の直列合成、並列回路における抵抗値の計算などにおいて利用されています。調和平均がどこで用いられているかは稿を改めます。

相乗平均の方が相加平均よりも小さくなるという「相加・相乗平均の関係」は知られていますが、調和平均を含めた「相加・相乗・調和平均の関係」というものがあります。

結論を書けば、
\begin{equation*}
調和平均 \leq 相乗平均 \leq 相加平均
\end{equation*}
となるのですが、本稿ではこの関係を証明します。

必要な知識
- 簡単な不等式の証明
- 相加・相乗平均の関係
- 3次関数の増減表


2015年3月9日月曜日

大きな数に関するトピック5 -3^3^3^3と10^80の比較。宇宙の全原子数との比較

指数のタワー表記の記事(詳細)において、
\begin{equation*}
3 \uparrow\uparrow4 = 3^{3^{3^3}}=3^{3^{27}}=3^{7625597484987} \\
\end{equation*}
という数が出てきました。指数のタワー表記がいかに簡単に膨大な数を表現できるかを実感してもらうために、この数がどれくらいの大きさのものなのかを考えます。

今まで、アボガドロ定数や地球の表面積、地球や宇宙の年齢と数を比較してきましたが、今回は宇宙にある(観測可能な)全原子数$10^{80}$と比較します。

必要な知識
- 指数のタワー表記(詳細)
- 常用対数の扱い

当記事は、現在 iPhone からの閲覧で数式が一部、正しく表示されないとの報告を受けて対処中です。ご迷惑をおかけしております。

大きな数に関するトピック4 ―地球の表面に何文字かけるか―

問1.地球の表面に文字をびっしり書き占めたら何文字かくことができるでしょうか。

問2.18gの水に含まれる水分子の一つ一つに番号をふっていき(注1)、それを順に書き出すとしたら、どれぐらいの面積が必要でしょうか。


先日の記事でも扱いましたが、${\rm H_2O}$の質量数は18gなので、水18gには$6.0×10^{23}$個の原子が含まれています。アボガドロ定数

\begin{equation*} {N_A=6.02214129×10^{23}} \end{equation*}

は、1molに含まれる粒子数を表す定数でした。本稿では、上の問をヒントに$10^{23}$という数の大きさを考えます。


必要な知識
- 指数の簡単な取扱い
- 比例式の計算
- 面積の換算
- アボガドロ定数

負の整数の多重階乗について(ガンマ関数不要)

先日の記事では、$0!=1,0!!=1$など、0のn重階乗が0と定義される理由を説明しました(詳細)が、この考え方を応用して、負の整数の多重階乗が理解できます。つまり、
\begin{equation*}
(-1)!!,(-4)!!!
\end{equation*}
などが定義できるということです。なお、(-2)!や(-1)!が発散することも本稿で確認します。

必要な知識
- n重階乗について(詳細
- 0のn重階乗について(詳細)
- 高校で学習する程度の極限

0! = 1 の理由と0のn重階乗(0!,0!!,0!!! …)

階乗の定義に際して、\begin{equation*}
0! = 1
\end{equation*}
が約束されています。この理由は何でしょうか。また、
\begin{equation*}
0!!
\end{equation*}
はいくつになるのでしょうか。

必要な知識
- 階乗の定義
- 組み合わせ ${}_n \mathrm{C} _r$ の計算方法

高校数学で学ぶ演算子とその線形性

何らかの(数学的)処理を指示するものを「演算子」と呼びます。
たとえば、"+"という演算子はふたつの数を足すことを意味し、"√"という演算子は根号の中の平方根を求めることを意味します。

今回は、高校数学で登場する演算子とその線形性について注目してみます。

必要な知識
- とくになし


2015年3月8日日曜日

√(素数)は無理数であることの証明

自然数$n$が素数であるならば、$\sqrt{n}$は無理数であることを証明します。

$\sqrt{2}$が無理数であることを証明しろという大学受験の定番の問題よりも一般性の高い問いです。


必要な知識
- 背理法

2015年3月7日土曜日

∫f(cos x) dx = ∫f(sin x) dx (0~π/2)の証明

$0 \leq x \leq \frac{\pi}{2}$ において連続な関数$f$について

\begin{equation}
\int_{0}^{\pi/2} f(\sin x) dx = \int_{0}^{\pi/2} f(\cos x) dx
\end{equation}

が成立します。これを証明します。高3生ならさほど難しくない証明なので、まずは自力でやってみてから、続きを読んでください。

必要な知識
- 三角関数の加法定理
- 高校数学程度の積分


sin x=2 を満たすx は??

\begin{equation*}
\sin x=2
\end{equation*}
をみたす$x$は存在するか。


という問いについて考えます。

\begin{equation}
-1 \leq \sin x \leq 1
\end{equation}
なので、方程式$\sin x=2$を満たす解は「ない」というのは間違いです。不等式(1)は$x$の定義域が実数の時にのみ有効です。この問いでは、$x$を実数とは限定していません(高校数学では文字の定義に断りがない場合は暗黙に実数と了解されてしまうことも多いですが…)。三角関数の定義域は複素数にまで拡張できます。


以下はオイラーの公式

\begin{equation*}
e^{ix}=\cos x + i \sin x
\end{equation*}
を既知とするので注意してください(オイラーの公式がなにものか知らなくても、形式的にこの公式を受け入れれば、理解できます)。

必要な知識
- オイラーの公式
- 対数関数
- 2次方程式の解の公式


sin,cos,tan以外の三角比とそれらを結ぶ関係式の図

高校でならう三角比は次のような三角形において



\begin{eqnarray*}
\sin \theta &=& \frac{b}{c} \\
\cos \theta &=& \frac{a}{c} \\
\tan \theta &=& \frac{b}{a}
\end{eqnarray*}

と定義される3つで、上から順に、正弦、余弦、正接などと呼ばれます。

しかし、直角三角形の辺の長さの比のとり方はこれ以外にもあります。


総乗記号Πの使い方

総和を表す記号シグマ$\sum$があるように、全て掛け合わせていく総乗を表す記号$\prod$が存在します。

必要な知識
- 総和記号を扱える。

各項の分母が等比数列、分子が等差数列のJakob Bernoulliの級数



\begin{equation*}

\frac{1}{3} + \frac{6}{21} + \frac{11}{147} + \frac{16}{1029} + \frac{21}{7203} + \frac{26}{50421} + \frac{31}{352947}+ \cdots

\end{equation*}
を求めてみましょう。一見すると、めちゃくちゃな級数に見えますが、よく見ると各項の分母は初項3、公比7の等比数列、各項の分子は初項1、公差5の等比数列だということが分かります(確かめよう)。そこで、まずはより一般的に


\begin{equation*}

\frac{a}{b} + \frac{a+c}{bd} + \frac{a+2c}{bd^2} + \frac{a+3c}{bd^3} + \frac{a+4c}{bd^4} + \cdots

\end{equation*}


という級数を求めることから始めます。これは、ヤコビ・ベルヌーイという17世紀の学者が研究した級数です。


必要な知識
- シグマの基本的な扱い方
- 無限等比数列の和の公式
- 等比数列、等差数列の和の公式


はめこみ級数(三角数の逆数の和) 1+1/3+1/6+1/10+1/15+…

はめこみ級数と呼ばれる
\begin{equation*}
1+\frac{1}{3}+\frac{1}{6}+\frac{1}{10}+\dots
\end{equation*}
がいくつになるか調べましょう。

気持ちよく求まります。定期テストにでてきても良いぐらいのレベルの問題なので、まずは自力で考えてみてから、読み進めて下さい。

必要な知識
- 部分分数分解
- 高校で習う級数の表し方(シグマ記号の扱い)
- 1から$n$までの自然数の和


高校生の知識だけで証明するガウス積分


\begin{equation*}
\int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2} dx = \sqrt{\pi}
\end{equation*}

を考えます。左辺は

\begin{eqnarray*}
\lim_{a \to \infty} \int_{-a}^{a} e^{-x^2} dx
\end{eqnarray*}

を意味します(注1)。この積分をガウス積分と呼び、数学や物理学では多用される非常に重要な結果です。簡単そうに見えますか?結構、難しいですよ。
これを示すには、二重積分を用いて変数変換をしたり、ガンマ関数をつかったりするのがメジャーなやり方ですが、いずれも高校生には難解です。

今回は、この多重積分もガンマ関数も用いずに、ほぼ高校の数学のみでガウス積分の結果を証明します

「ほぼ」と書きましたが、便宜上、証明には二重階乗を用いるので、その部分だけは高校の数学の範囲を逸脱しています(ごめんなさい)。

以下の記事では、高校で学習する微積分の知識に加えて

1.二重階乗[ほんの少しだけ高校の数学外] (詳細
2.$\sin^n x$の定積分の公式[高校の数学] (詳細
3.Wallisの公式[高校の数学のみで証明可] (詳細

を利用します。理解できてない部分は記事を読んで確認してから以下を読み進めてください。

極限値の難問 n(x^1/n-1)→? (n→∞)

$ x > 0 $ において、

\begin{eqnarray*}
\lim_{n \to \infty} n \left( \sqrt[n]{x}-1 \right) 
\end{eqnarray*}

を考えます。この結果は、高校の数学のみで理解できますが、発想が難しいかも知れません。

必要な知識
-微分の定義
-高校で学ぶ程度の微積分(とくに$a^x$を$a$で微分するとどうなるか)←ヒントですよ!

2015年3月5日木曜日

ルート2のルート2乗のルート2乗のルート2乗の・・・ 

\begin{equation*}
\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{.^{.^{.}}}}}}
\end{equation*}
はどうなるのでしょう。こういった表記は右から計算していくのでした(詳細)。無限におおきくなっていくのでしょうか?

必要な知識
- $3^{3^{3}}$などの意味(詳細)
- 数学的帰納法
- 二項定理

雨粒の速さとエネルギー―空気抵抗がなかったら…

空気抵抗がなければ、雨粒はどれくらいの速さで落下してくるでしょうか。


必要な知識
-高校物理の公式$v^2-v_0^2=2ax$

Wallisの公式 その1

Wallisの公式

\begin{equation}
\lim_{n \to \infty} \frac{1}{\sqrt{n}} \frac{(2^nn!)^2}{(2n)!} = \sqrt{\pi}\end{equation}

を証明します。

必要な知識
- $ \sin $のn乗の定積分の公式 (詳細
- 二重階乗を一重階乗に変換する定理(詳細
- 極限の知識
- はさみうちの原理

2015年3月4日水曜日

sinのn乗、cosのn乗の積分

高校の教科書によっては載っている内容ですが、便利なのでここでも紹介します。$n$を自然数として

\begin{eqnarray*} \int_0^{\pi/2} \sin^nx dx
=
\begin{cases} \frac{n-1}{n} × \frac{n-3}{n-2} \dots ×\frac{3}{4} ×\frac{1}{2}×\frac{\pi}{2} (nが偶数)& \\
\frac{n-1}{n} × \frac{n-3}{n-2} \dots ×\frac{4}{5} ×\frac{2}{3}×1 (nが奇数)&
\end{cases}\end{eqnarray*}

が成立することが知られています。これを証明してみましょう。
また、この記事の最後では、二重階乗を使って上の公式を表記してみます。

必要な知識
- 三角関数の微積分
- 漸化式の扱い


Machinの公式の証明

Marchinの公式

\begin{equation*}
\frac{\pi}{4} = 4 \tan^{-1} \frac{1}{5} - \tan^{-1} \frac{1}{239}
\end{equation*}

を証明します。

ここで、$\tan^{-1} x$は、$\tan x$の逆数ではなく、逆関数を意味します。逆関数についてはこちらの記事を参考にしてください(クリック!)。

すなわち、

\begin{equation*}
y = \tan^{-1} x \Leftrightarrow x = \tan y
\end{equation*}

です。なお、$\tan^{-1} x$は主値をとるものとします。

必要な知識
- $\tan$の逆関数について(詳細
- $\tan$の加法定理や倍角の式

知っていると便利な極限その4 e^(1/x)/x^n→? (x→+0)



\begin{equation*} \lim_{x \to +0} \frac{e^{-\frac{1}{x}}}{x^n} \end{equation*}


がいくつになるか知っていますか? 知っていると便利な極限なので求めておきましょう。今回はやや易しめです。

(本稿ではδ-ε論法は使わず高校生でも分かる求め方を扱います。)




必要な知識

- 高校で学習するレベルの極限の知識

次数が奇数の代数方程式は実数解を必ず持つ。

一般に、
\begin{equation*}
a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\dots+a_1x^1+a_0=0 (a \neq 0)
\end{equation*}
と書ける方程式を$n$次の代数方程式と呼びます。そして、代数方程式でない方程式を超越方程式などと呼びます。例えば、$x$に関する方程式
\begin{eqnarray*}
\log x = 23 \\
\sin 2x = \pi \\
\end{eqnarray*}
などは超越方程式です。

さて、次数が奇数の多項式
\begin{equation*}
a_{2n+1}x^{2n+1}+a_{2n}x^{2n}+a_{2n-1}x^{2n-1+}\dots+a_1x+a_0 (a \neq 0)
\end{equation*}
は零解、つまり
\begin{equation*}
a_{2n+1}x^{2n+1}+a_{2n}x^{2n}+a_{2n-1}x^{2n-1+}\dots+a_1x+a_0 = 0 (a \neq 0)
\end{equation*}
を満たす実数$x$を持つことが知られています。これを示します。

必要な知識
- 中間値の定理
- 多項式の極限


sinx+sin2x+sin3x+…+sin(nx)=?

$\sin x + \sin 2x + \sin 3x + \dots + \sin nx $と計算していくと、以下のようになることが知られている。

\begin{align}
\sum_{k=1}^n \sin k\theta = \frac{\sin \frac{n \theta}{2} \sin \frac{(n+1)\theta}{2}}{\sin \frac{\theta}{2}} \end{align}

ここでは、

\begin{align}
\sum_{k=0}^n \cos k\theta = \frac{\cos \frac{n \theta}{2} \sin \frac{(n+1)\theta}{2}}{\sin \frac{\theta}{2}} \end{align}

とあわせて証明してみよう。


必要な知識
- 等比数列の和の公式、総和の扱い方など数学Bの「数列」で学習する一通りの知識
- 三角関数の倍角、和積、積和公式など数学IIの「三角関数」にある基本的な公式
- オイラーの公式

証明の指針





大きな数に関するトピック1 -トランプ52枚を全部並び替えたら…-

あなたはとあるゲームに負けて、罰ゲームとして、次の2つのうちどちらかを実行しなければなりません。どちらを選択しますか。


  • 新宿駅で裸踊り
  • トランプを全通り並び替える


人通りの多いところで裸踊りだなんて絶対にイヤですよね。では、2.を選択しますか?


必要な知識
- 高校数学で学習する場合の数に関する知識
- 大きな数を指数で表示する能力
- 指数法則


発散の速さについて

$\log x,x^n,e^x,x^x$といった関数はいずれも$x \rightarrow \infty$ で無限大に発散することが知られている。しかし、同じ無限大でも、「発散の速さ」に差がある。ここではグラフを見て、発散の速度の違いを認識する。


必要な知識
-高校数学程度の極限に関する知識


虚数の虚数乗は?

虚数の虚数乗はどうなるでしょう。高校生からよくされる質問です。

\begin{align}
i^i=?
\end{align}


必要な知識
- オイラーの公式
- 実数のべき乗が$x^\alpha=e^{\alpha \log x}$で定義されていること


2015年3月3日火曜日

知っていると便利な極限その1 nのn乗根→? (n→∞)

\begin{equation*}
\lim_{n \to \infty} \sqrt[n]{n}
\end{equation*}

がいくつになるか知っていますか?
知っていると便利な極限なので求めておきましょう。
(本稿ではδ-ε論法は使わず高校生でも分かる求め方を扱います。)


必要な知識
- 高校で学習する程度の極限
- はさみうちの原理
- 二項定理








知っていると便利な極限その2 (n!)^(1/n)→? (n→∞)

\begin{equation*}
\lim_{n \to \infty} \sqrt[n]{n!}
\end{equation*}

がいくつになるか知っていますか?
知っていると便利な極限なので求めておきましょう。


必要な知識
- 高校で学習する程度の極限
- はさみうちの原理
- 総乗記号Πの扱い



虚数の大小 虚数の世界で不等式はつくれない??

複素数の世界では一般に絶対値の大小を比較することができますが、複素数そのものの大小はどうなっているでしょうか。
実数の世界では、数直線上の右側にある数を「大きい」左側にある数を「小さい」と定義し、実数の不等式を与えることができます。
同様にして、複素数の世界で大小を考え、

\begin{equation*}
\alpha+i\beta < \gamma+ i\delta
\end{equation*}
という風に書くことができるだろうか。

必要な知識
- 高校で学習する程度の複素数の知識


高次代数方程式の共役解

一般に$n$次の実数係数の代数方程式
\begin{equation}
a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\dots+a_2x^2+a_1x+a_0=0 (a_n \neq 0)
\end{equation}
において、複素数$\alpha$がこの方程式の解ならば、その共役複素数$\overline{\alpha}$もこの方程式の解になる。
この定理を証明します。


必要な知識
- 共役複素数の計算法則



n次方程式の解と係数の関係

2次方程式$ax^2+bx+c=0$の解を$\alpha,\beta$とするとき、
\begin{eqnarray*}
  \left\{
    \begin{array}{l}
      \alpha + \beta = -\frac{b}{a} \\
      \alpha \beta = \frac{c}{a}
    \end{array}
  \right.
\end{eqnarray*}
という関係が成立します(ただし、$a \neq 0$)。これは高校の教科書にも載っている重要な関係式で、2次方程式の解と係数の関係と呼びます。一般に解と係数の関係は方程式の係数が虚数でも用いることができました。高校数学の範囲内では根号内の虚数は処理できないので、解の公式は実係数の方程式でしか利用できませんが、解と係数の関係は虚数係数でも利用できました。
同様に、3次方程式$ax^3+bx^2+cx+d=0$の解を$\alpha,\beta,\gamma$とした場合は、
\begin{eqnarray*}
  \left\{
    \begin{array}{l}
      \alpha + \beta + \gamma = -\frac{b}{a} \\
      \alpha \beta + \beta \gamma + \gamma \alpha = \frac{c}{a} \\
      \alpha \beta \gamma = -\frac{d}{a}
    \end{array}
  \right.
\end{eqnarray*}
という3次方程式の解と係数の関係が成立します。

では、より高次な代数方程式における解と係数の関係はどうなっているでしょうか。本稿では4次方程式の解と係数の関係を求め、さらに高次な方程式の解と係数の関係を求めます。

なお、解と係数の関係を見つけたのは、アルベール・ジラール(1595-1632)だと言われています。

必要な知識
- 恒等式の係数比較
- $n$次の代数方程式には$n$個の解があるという事実(代数学の基本定理)

指針:
4次方程式の解と係数の関係を求め、帰納的に5次以上の解と係数の関係がどうなっているかを類推する。


虚数と複素数の違い

虚数と複素数の違いがあいまいな高校生が多いです。次の問いに答えることができますか?

問.次の3つの数は、「純虚数」「複素数」「虚数」「実数」のどれに該当するか言え。

(1) $23$
(2) $3+i$
(3) $\sqrt{-2}$
(4) $0$


大きな数に関するトピック3 ―アボガドロ定数個のお米を日本の領土にしきつめたら―



先日の記事でも扱いましたが、${\rm H_2O}$の質量数は18gなので、水18gには$6.0×10^{23}$個の原子が含まれています。アボガドロ定数

\begin{equation*} {N_A=6.02214129×10^{23}} \end{equation*}

は、1molに含まれる粒子数を表す定数でした。



ここでは、日本の領土にアボガドロ定数個のお米を敷き詰めたら高さがどれくらいになるかを考えることで、$10^{23}$という数字の大きさを実感しましょう。


必要な知識

- 指数の簡単な取扱い

累乗のタワー表示

\begin{equation*}
3^{3^3}
\end{equation*}

はいくつだろうか。729になるだろうか?


必要な知識
- 中学で学習する程度の指数


期待値が無限大になるお話 サンクトペテルブルクの賭け

ギャンブルをするときの目安として、期待値がかける金額を下回るときに「平均的には損をする」と言い、期待値がかける金額を上回るときに「平均的には得をする」などと考えますね。では次のサンクトペテルブルクの賭けと呼ばれる昔から知られているゲームではどうでしょうか。


裏と表の出る確率がそれぞれ、$ \frac{1}{2} $であるコインを用意し、コイントスを行います。このコイントスはコインの裏が出るまで続けるものとします。$ {n}$ 回目に初めて裏が出た時、$  {2^n}$ 円の賞金を得ることができます。

このゲームで得られる賞金の期待値を考えてみましょう。


必要な知識
- 高校で学習する程度の場合の数・確率