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2015年3月12日木曜日

実数の絶対値と複素数の絶対値の根本的な違い

先日の記事でも紹介したように、虚数同士の大小を(私たちのよく知る意味においては)比較することはできません(詳細)。一方で、虚数の絶対値は定義することができます。しかし、その扱いには注意が必要です。

問.|z-2|=1を満たす複素数zを求めよ。

これに対して、ある学生は以下のように考えました。

まずは絶対値記号をはずして
\begin{equation*} z-2=\pm1 \end{equation*}
より、
\begin{equation*} z=1,3 \end{equation*}
実はこれは間違いです。どこがおかしいか説明できますか。

本稿では、

1.複素平面についておさらい
2.複素数の絶対値の定義を納得する
3.実数の絶対値と複素数の絶対値の根本的な違いを指摘する
4.この問いに対する正しい答えを導く

ことを行います。

必要な知識
- 実数の絶対値の定義や絶対値記号の外し方
- 複素数と虚数の定義(詳細)
- 円の方程式x^2+y^2=r^2



復習―複素平面と複素数の絶対値

まずは、複素平面について復習する。高校の教科書に載っている内容であるから、既習の方は読み飛ばして構わない。

我々は実数というものが数直線上の点で表現されることをよく知っている。これに対応して、二つの実数x,yからなる複素数zを平面上の点として表すことができる。この平面を複素平面と呼ぶ。方法はいたってシンプルであり、横軸にzの実部x、縦軸に虚部yをとるだけである。例えば、複素数2+i-2+3iは次の図のようにプロットされる。



上図の黒い点が左から複素数-2+3i,2+iに対応する点である。全ての実数が数直線上の点に対応するように、全ての複素数が複素平面上のいずれか1点に対応する。

ここで、実数の絶対値の定義を思い出して欲しい。実数aの絶対値|a|はなんだと教わっただろうか。単に「符号をとったもの」ではなく、「絶対値とは数直線上の原点との距離」と習ったはずである。このことから、複素数の絶対値を複素平面上の原点との距離と定義しよう。

定義
x,yを実数としたとき、一般の複素数z=x+iyの絶対値は
\begin{equation*} |z|=\sqrt{x^2+y^2} \end{equation*}
で定義される。

勘違いの正体

実数aについて、|a|=2というのは数直線上において点aが原点から距離2だけ離れていることを意味する。これを満たすa+2-2の二点のみということが下の数直線からも分かる。
|a|=2の意味する点は、数直線上の原点から2だけ離れている二点。つまり、+2と-2のみ。
一般に0でない実数a,bについて|a|=bを満たす点a\pm bの二点に限られるため、たとえば絶対値を含むxに関する方程式|f(x)|=bは、f(x) = \pm bとして、考えることができた(もちろん解が求まった後に付帯条件を満たすか確認が必要だが)。

一方で、複素数z=x+iyについて|z|=2を満たす点というのは、複素平面上の原点からの距離が2である点を指す。zの絶対値は定義より\sqrt{x^2+y^2}であるから、複素平面上において\sqrt{x^2+y^2}=2を満たす点を指すので、|z|=2を満たす点は無数に存在する。図形と方程式の章で学習した円の方程式を思い出せばわかるように、\sqrt{x^2+y^2}=2というのは中心が原点で半径が2の円を表すからだ。


|z|=2を考えるとき、実数の時と同じように絶対値をはずしてしまうと、z=\pm 2となる。確かに、z=2z=-2というのは上の図を見てもわかるように複素平面の原点からの距離が2であるから、|z|=2を満たす。しかし、|z|=2を満たすzはこの二つだけではないのだ。

このように、bを任意の実数としたとき|z|=bを満たす複素数zというのは実数の時とは異なり、無数に存在する。

これが実数の絶対値と複素数の絶対値の根本的な違いだ。

正しい考え方


では、|z-2|=1を満たす複素数zを求めよという問いへの正しい答えを見てみよう。ここで複素数zは実部xと虚部yを用いて、z=x+iyと書き改める。これを与方程式に代入すれば、

\begin{equation*} |x+iy-2|=1 \end{equation*}

となる。ここで、複素数の絶対値の定義を思い出せば、左辺の絶対値記号の中の実部x-2と虚部yに注目して

\begin{equation*} |x+iy-2|=|x-2+iy|=\sqrt{(x-2)^2+y^2}=1 \end{equation*}

とかけることが分かる。両辺を二乗すれば、

\begin{equation*} (x-2)^2+y^2=1 \end{equation*}

と、円の方程式が現れる。これをプロットすれば、


となる。黒点で示された複素数が|z-2|=1を満たす。

z=1,3はもちろん、それ以外の点、たとえば(2-\frac{1}{\sqrt{2}})+i\frac{1}{\sqrt{2}}などもこの複素平面上の円に含まれる。

結論として、|z-2|=1を満たすのは複素平面上でx=2を中心とする半径1の円周上にある全ての複素数であることが分かった。




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