という問いについて考えます。単に「平均」といえども、その種類はたくさんあります。成績で平均をつけるとしたら相加平均をとるに決まっているだろう!と思う人が多いと思いますが、自分の大学では一部の科目において成績評定は相乗平均によって評価されます。
先日の記事では、「相加平均」「相乗平均」「調和平均」を紹介し、それらに成立する不等式を紹介しました(詳細)。これによると、同じ二つの値において、調和平均がもっとも小さく、相加平均がもっとも大きくなります。相加平均を採用した場合とそれ以外を採用した場合の学生の負担の差について見てみましょう。
必要な知識
- 相加・相乗・調和平均の関係(詳細)
- 相加平均・相乗平均・調和平均の定義
以下、進級のために期末試験で最低とらなければならない点数を$y$点とする。
まずは、相加平均を採用した場合について考える。$x$と$y$について相加平均をとって、これが50点のときにぎりぎりで進級できるので、
\begin{equation*}
\frac{x+y}{2} = 50
\end{equation*}
- 相加平均・相乗平均・調和平均の定義
以下、進級のために期末試験で最低とらなければならない点数を$y$点とする。
まずは、相加平均を採用した場合について考える。$x$と$y$について相加平均をとって、これが50点のときにぎりぎりで進級できるので、
\begin{equation*}
\frac{x+y}{2} = 50
\end{equation*}
を考える。これを$y$について解けば、
\begin{equation*}
y=100-x
\end{equation*}
となる。
二回のテストの合計点$x+y$が100点であればいいのだから、中間試験で0点をとっても、期末試験で満点を取れば進級は可能だということだ。中間試験で失敗しても、期末試験でがんばれば挽回できる相加平均による評価は非常に教育的だといえるだろう!
なお、進級のぎりぎりラインを示した図は以下。
この青いラインよりも下側に位置する人(たとえば、40点-50点や70点-10点の人など)は落第である。
次に、相乗平均を考える。$x$と$y$について相乗平均をとって、これが50点のときにぎりぎりで進級であるから、
\begin{equation*}
\sqrt{xy} = 50
\end{equation*}
を考える。これを$y$について解く。両辺を二乗して
\begin{equation*}
xy=2500
\end{equation*}
両辺を$x$で割って
\begin{equation*}
y=\frac{2500}{x}
\end{equation*}
となる。二回のテストの平方根の積$\sqrt{xy}$が50点のときにぎりぎり合格なわけだが、中間試験で0点をとると、その時点で0に何をかけても50にはならないので落第決定である。また、中間試験で1点をとると、期末試験で2500点とらなければ挽回できないので同じく落第決定である。
これを先と同じようにグラフにすると以下のようになる。
この曲線よりも下側に居る人は落第である。中間の点数が25点の場合、期末で100点をとればギリギリ進級できるが、中間・期末のいずれかで25点未満の点数をとるとその時点で落第が決定する。相加平均の場合は中間で25点の人は期末試験は75点で合格であったことを比べれば、差は大きい。さきの相加平均と比べて、落第する部分の面積が大きいので、学生の負担は明らかに大きいことが分かる。
次に調和平均の場合を見よう。$x$と$y$について調和平均をとって、これが50点のときにぎりぎりで進級であるから、
\begin{equation*}
\frac{2}{\frac{1}{x}+\frac{1}{y}} = 50
\end{equation*}
を考える。式を整理すると、
\begin{equation*}
\frac{2xy}{x+y}=50
\end{equation*}
とかけるので、これを$y$について解いて、
\begin{equation*}
y=\frac{25x}{x-25}
\end{equation*}
\begin{equation*}
y=100-x
\end{equation*}
となる。
二回のテストの合計点$x+y$が100点であればいいのだから、中間試験で0点をとっても、期末試験で満点を取れば進級は可能だということだ。中間試験で失敗しても、期末試験でがんばれば挽回できる相加平均による評価は非常に教育的だといえるだろう!
なお、進級のぎりぎりラインを示した図は以下。
中間試験の点数(横軸)に対して、進級のために期末試験でとらなければならない点数(縦軸) |
この青いラインよりも下側に位置する人(たとえば、40点-50点や70点-10点の人など)は落第である。
次に、相乗平均を考える。$x$と$y$について相乗平均をとって、これが50点のときにぎりぎりで進級であるから、
\begin{equation*}
\sqrt{xy} = 50
\end{equation*}
を考える。これを$y$について解く。両辺を二乗して
\begin{equation*}
xy=2500
\end{equation*}
両辺を$x$で割って
\begin{equation*}
y=\frac{2500}{x}
\end{equation*}
となる。二回のテストの平方根の積$\sqrt{xy}$が50点のときにぎりぎり合格なわけだが、中間試験で0点をとると、その時点で0に何をかけても50にはならないので落第決定である。また、中間試験で1点をとると、期末試験で2500点とらなければ挽回できないので同じく落第決定である。
これを先と同じようにグラフにすると以下のようになる。
中間試験の点数(横軸)に対して、進級のために期末試験でとらなければならない点数(縦軸) |
次に調和平均の場合を見よう。$x$と$y$について調和平均をとって、これが50点のときにぎりぎりで進級であるから、
\begin{equation*}
\frac{2}{\frac{1}{x}+\frac{1}{y}} = 50
\end{equation*}
を考える。式を整理すると、
\begin{equation*}
\frac{2xy}{x+y}=50
\end{equation*}
とかけるので、これを$y$について解いて、
\begin{equation*}
y=\frac{25x}{x-25}
\end{equation*}
となる。これのグラフをかけば、次のようになる。
中間試験の点数(横軸)に対して、進級のために期末試験でとらなければならない点数(縦軸) |
相乗平均に比べて、さらに落第範囲の面積が大きくなっている。中間・期末のいずれかで33点以下の点数をとると、その時点で落第が決定する。相加平均の場合は中間で33点の人は期末試験は67点以上で合格、相乗平均の場合は76点以上で合格であったことを比べれば、差は大きい。まさに学生の敵といえる評価の方法である。
まとめ
上で書いた3つのグラフをひとつにすると次のようになる。
青:相加平均 赤:相乗平均 緑:調和平均 それぞれの平均を採用したときのぎりぎりの進級ライン。各曲線よりも上に位置すれば合格。 |
先日の記事で触れた相加・相乗・調和平均の関係(詳細)が成立していることが分かる。また、$x=y=50$において、いずれの平均値も同じ値であることも注目に値する。
各曲線よりも下に位置する人は落第する。このグラフの$x$軸,$y$軸,$y=100,x=100$と曲線のつくる面積の大きさが学生の負担の大きさを表していると理解して差し支えないだろう。具体的に面積を求めてみるとおもしろいかもしれない。
繰り返しになるが、中間試験で失敗しても、期末試験でがんばれば挽回できる相加平均による評価が最も教育的だといえるだろう!相乗平均や調和平均を採用するとはじめの試験で躓いた学生はその時点で落第が決まり、挽回するチャンスを与えられないことがグラフより分かる。
いずれにせよ結論として、「もしも、明日から学校の評定が相加平均ではなく相乗平均や調和平均をもって評価されるとなれば、多くの進級できたはずの人が落第する」ということがいえた。
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