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2015年3月10日火曜日

相加・相乗・調和平均の関係

二つの正の値a,bにおいて相加平均(算術平均)は
\begin{equation*} \frac{a+b}{2} \end{equation*}
と定義され、相乗平均(幾何平均)は
\begin{equation*} \sqrt{ab} \end{equation*}
で定義されることは高校の教科書に載っています。また、あまり知られていませんが、調和平均というものも存在し、これは
\begin{equation*} \frac{2}{\frac{1}{a}+\frac{1}{b}} \end{equation*}
で定義されています。この調和平均は、平均の速さを求める問題や、ばね定数の直列合成、並列回路における抵抗値の計算などにおいて利用されています。調和平均がどこで用いられているかは稿を改めます。

相乗平均の方が相加平均よりも小さくなるという「相加・相乗平均の関係」は知られていますが、調和平均を含めた「相加・相乗・調和平均の関係」というものがあります。

結論を書けば、
\begin{equation*} 調和平均 \leq 相乗平均 \leq 相加平均 \end{equation*}
となるのですが、本稿ではこの関係を証明します。

必要な知識
- 簡単な不等式の証明
- 相加・相乗平均の関係
- 3次関数の増減表




相乗平均≦相加平均

まずは、復習がてら、「相乗平均≦相加平均」を示す。方法はいくつかあるが、教科書にもあるような標準的なメソッドをとる。

二つの正の数a,bに関して、

\begin{equation} \sqrt{ab} \leq  \frac{a+b}{2} \end{equation}

を示したい。両辺に2をかけて整理した式
\begin{equation*} a+b-2\sqrt{ab} \geq 0 \end{equation*}
が示せれば、良い。この式の左辺は、
\begin{equation*} a-2\sqrt{ab}+b = \left( \sqrt{a}-\sqrt{b} \right)^2 \end{equation*}
とかける。実数の二乗は必ず0以上になるので、
\begin{equation*} \left( \sqrt{a}-\sqrt{b} \right)^2 \geq 0 \end{equation*}
より、相加相乗平均の関係が示せた。

尚、等号が成立するのはa=bの時に限る。


調和平均≦相乗平均

次に、調和平均≦相乗平均を示す。これは、相加相乗平均の関係を用いてすぐ示せる。正の値a,bに対する調和平均をsとかけば、調和平均の定義は
\begin{eqnarray*} s &=& \frac{2}{\frac{1}{a}+\frac{1}{b}} \\ \end{eqnarray*}
であり、逆数をとれば、
\begin{eqnarray*} \frac{1}{s} &=& \frac{\frac{1}{a}+\frac{1}{b}}{2} \\ \end{eqnarray*}
となることがわかる。両辺に2をかけた式
\begin{eqnarray*} \frac{2}{s} &=& \frac{1}{a} + \frac{1}{b} \end{eqnarray*}
の右辺において、\frac{1}{a},\frac{1}{b}という二つの正の数についての相加相乗平均の関係を用いれば、
\begin{eqnarray*} \frac{2}{s} &=& \frac{1}{a} + \frac{1}{b} \geq 2\sqrt{\frac{1}{ab}} \end{eqnarray*}
となる。ふたたび逆数をとって両辺をかければ
\begin{eqnarray*} s \leq \sqrt{ab} \end{eqnarray*}
となる。左辺は調和平均で右辺は相乗平均であるから、相乗調和平均の関係が示せた。なお、等号が成立するのは、
\begin{eqnarray*} s = \frac{2ab}{a+b} = \sqrt{ab} \end{eqnarray*}
をみたす場合、すなわち
\begin{eqnarray*} \sqrt{ab}(a+b) &=& 2ab \\ ab(a+b)^2 &=& 4a^2b^2 \\ a^2+2ab+b^2 &=& 4ab \\ (a-b)^2&=&0 \end{eqnarray*}
が満たされる場合であるから、a=bのときである。

調和平均≦相乗平均≦相加平均


以上の議論から、
\begin{equation*} \frac{2}{\frac{1}{a}+\frac{1}{b}} \leq \sqrt{ab} \leq \frac{a+b}{2} \end{equation*}
という相加・相乗・調和平均の関係が示せた。なお、等号で結ばれるのは、a=bのときである。

なお、実際に二つのデータにおいて相加・相乗・調和平均が成り立っていることの例として、学生の評定についての記事を書いたので参考にして欲しい(詳細)。

データ数が3の場合の相乗平均≦相加平均

ここまで、データ数が2の時について見てきたが、値の数がもっと多いときも上で示した相加・相乗・調和平均の関係は成立している。これの証明はなかなか体力のいることなので、別の記事にあらためて書こうと思う。

ここではデータ数が3の場合についても相加・相乗・調和平均の関係が成立していることを証明する。

はじめに、a,bを正の定数、xx>0をみたすとして、
\begin{equation*} f(x)=a^3+b^3+x^3-3abx \end{equation*}
の最小値を調べる。この関数を微分すれば、
\begin{equation*} f'(x)=3x^2-3ab=3(x+\sqrt{ab})(x-\sqrt{ab}) \end{equation*}
である。これより、x=\sqrt{ab}f(x)は最小となることが分かる。そして、その最小値は、
\begin{eqnarray*} f(\sqrt{ab}) &=& a^3+b^3+\sqrt{a^3b^3}-3ab\sqrt{ab} \\ &=& a^3-2\sqrt{a^3b^3}+b^3 \\ &=&  (\sqrt{a^3} - \sqrt{b^3})^2 \geq 0 \end{eqnarray*}
であることがわかる。ただし、最後の不等式には、実数の二乗は必ず0以上になることを用いた。以上から、x>0のとき、つねに
\begin{equation*} a^3+b^3+x^3-3abx \geq 0 \end{equation*}
が成り立つので、x=cとすれば、
\begin{equation*} a^3+b^3+c^3-3abc \geq 0 \\ \frac{a^3+b^3+c^3}{3} \geq abc \end{equation*}
が成り立つ。ここで、a,b,c\sqrt[3]{a},\sqrt[3]{b},\sqrt[3]{c}と書き直す。すると、
\begin{equation*} \frac{a+b+c}{3} \geq \sqrt[3]{abc} \end{equation*}
が言える。よって、3つの値における相加相乗平均の関係が示せた。

つぎに、データ数が3のときの相乗調和平均の関係式を示す。正の値a,b,cに対する調和平均をsとかけば、調和平均の定義は
\begin{eqnarray*} s &=& \frac{3}{\frac{1}{a}+\frac{1}{b}+\frac{1}{c}} \\ \end{eqnarray*}
である。これの逆数をとり、両辺に3をかけ、a,b,cに関する相加相乗平均の関係式より
\begin{eqnarray*} \frac{3}{s} &=& \frac{1}{a} + \frac{1}{b} + \frac{1}{c}\geq 3\sqrt[3]{\frac{1}{abc}} \end{eqnarray*}
となる。ふたたび逆数をとって両辺を3をかければ
\begin{eqnarray*} s \leq \sqrt[3]{abc} \end{eqnarray*}
となる。

よって、データ数が3のときの相乗調和平均の関係も示せた。
以上より、値が3つであっても、相加・相乗・調和平均の関係すなわち、
\begin{equation*} \frac{3}{\frac{1}{a}+\frac{1}{b}+\frac{1}{c}} \leq \sqrt[3]{abc} \leq \frac{a+b+c}{3} \end{equation*}
が成り立つことが言える。


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