先日の記事では、$0!=1,0!!=1$など、0のn重階乗が0と定義される理由を説明しました(詳細)が、この考え方を応用して、負の整数の多重階乗が理解できます。つまり、
\begin{equation*}
(-1)!!,(-4)!!!
\end{equation*}
などが定義できるということです。なお、(-2)!や(-1)!が発散することも本稿で確認します。
必要な知識
- n重階乗について(詳細)
- 0のn重階乗について(詳細)
- 高校で学習する程度の極限
以下では、$0!=0!!=0!!!=\dots=1$を断りなく用いる。これの証明はこちら。
$0!!$は、
\begin{eqnarray*}
(n-2)! &=& (n-2)×(n-4)×(n-6)×\dots \\
&=& \frac{n×(n-2)×(n-4)×\dots}{n} \\
&=& \frac{n!!}{n}
\end{eqnarray*}
\begin{eqnarray*}
\lim_{n \nearrow -2} n !! &=& \lim_{n \nearrow 0} \frac{1}{n} = - \infty \\
\lim_{n \searrow -2} n !! &=& \lim_{n \searrow 0} \frac{1}{n} = +\infty
\end{eqnarray*}
(-k)!!=
\left\{
\begin{array}{l}
\frac{1}{k!!} & (k=4n+1) \\
-\frac{1}{k!!} & (k=4n+3) \\
発散 & (k=2n)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray*}
(-1)!!,(-4)!!!
\end{equation*}
などが定義できるということです。なお、(-2)!や(-1)!が発散することも本稿で確認します。
必要な知識
- n重階乗について(詳細)
- 0のn重階乗について(詳細)
- 高校で学習する程度の極限
以下では、$0!=0!!=0!!!=\dots=1$を断りなく用いる。これの証明はこちら。
負の整数の2重階乗
$0!!$は、
\begin{eqnarray*}
(n-2)! &=& (n-2)×(n-4)×(n-6)×\dots \\
&=& \frac{n×(n-2)×(n-4)×\dots}{n} \\
&=& \frac{n!!}{n}
\end{eqnarray*}
この両辺にn=2を代入することによって$0!!=1$と定義された。この拡張方法を許すとすれば、ここに$n=1$を代入してみよう。すると、
\begin{eqnarray*}
(1-2)!! &=& \frac{1!!}{1} \\
(-1)!! &=& 1
\end{eqnarray*}
となり、$(-1)!!=1$という負の2重階乗の値が求まってしまった!
同様にして、$n=0$を代入してみると、
\begin{eqnarray*}
(0-2)!! &=& \frac{0!!}{0} \\
(-2)!! &=& \pm \infty
\end{eqnarray*}
\begin{eqnarray*}
(1-2)!! &=& \frac{1!!}{1} \\
(-1)!! &=& 1
\end{eqnarray*}
となり、$(-1)!!=1$という負の2重階乗の値が求まってしまった!
同様にして、$n=0$を代入してみると、
\begin{eqnarray*}
(0-2)!! &=& \frac{0!!}{0} \\
(-2)!! &=& \pm \infty
\end{eqnarray*}
かなり適当な書き方で数学が専門の人に怒られてしまいそうだが、$(-2)!!$はどうやら発散しているらしいことがわかった。もう少し、丁寧に書くならば、
\begin{eqnarray*}
\lim_{n \nearrow -2} n !! &=& \lim_{n \nearrow 0} \frac{1}{n} = - \infty \\
\lim_{n \searrow -2} n !! &=& \lim_{n \searrow 0} \frac{1}{n} = +\infty
\end{eqnarray*}
とかでどうだろう。
次に、$n=-1,-2$を代入すれば、
\begin{eqnarray*}
(-1-2)!! &=& \frac{(-1)!!}{-1} \\
(-3)!! &=& -1 \\ \\
(-2-2)!! &=& \frac{(-2)!!}{-2} \\
(-4)!! &=& \infty
\end{eqnarray*}
(-1-2)!! &=& \frac{(-1)!!}{-1} \\
(-3)!! &=& -1 \\ \\
(-2-2)!! &=& \frac{(-2)!!}{-2} \\
(-4)!! &=& \infty
\end{eqnarray*}
とまたまた、負の2重階乗の値が求まった一方で、$(-4)!!$は発散してしまった(ただし、$(-2)!!$と発散の方向が逆)ようだ。これを繰り返していけば、どうやら、(-偶数)!!は発散してしまうが、(-奇数)!!であれば値が求まるということが分かる。そこで、$n$に奇数をどんどん入れていけば、次のようになる。
\begin{eqnarray*}
(-1)!! &=& 1 \\
(-3)!! &=& -1 \\
(-5)!! &=& \frac{1}{3} \\
(-7)!! &=& -\frac{1}{15} \\
(-9)!! &=& \frac{1}{105} \\
(-11)!! &=& -\frac{1}{945} \\
(-13)!! &=& \frac{1}{10395} \\
(-15)!! &=& -\frac{1}{135135}\\
\end{eqnarray*}
これを注意深く観察すれば、1でない自然数$k$と自然数$n$について
\begin{eqnarray*} (-1)!! &=& 1 \\
(-3)!! &=& -1 \\
(-5)!! &=& \frac{1}{3} \\
(-7)!! &=& -\frac{1}{15} \\
(-9)!! &=& \frac{1}{105} \\
(-11)!! &=& -\frac{1}{945} \\
(-13)!! &=& \frac{1}{10395} \\
(-15)!! &=& -\frac{1}{135135}\\
\end{eqnarray*}
これを注意深く観察すれば、1でない自然数$k$と自然数$n$について
(-k)!!=
\left\{
\begin{array}{l}
\frac{1}{k!!} & (k=4n+1) \\
-\frac{1}{k!!} & (k=4n+3) \\
発散 & (k=2n)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray*}
となることがわかる。このようにして、負の奇数の二重階乗が定義できる。
負の整数の3重階乗
負の整数の3重階乗についても、以上と同様の議論ができる。(-3の倍数)!は発散することがすぐに分かる一方で、以下のように負の三重階乗の値を求められる。
\begin{eqnarray*}
(-1)!!! &=& 1 \\
(-2)!!! &=& 1 \\
(-4)!!! &=& -1 \\
(-5)!!! &=& -\frac{1}{2} \\
(-7)!!! &=& \frac{1}{4} \\
(-8)!!! &=& \frac{1}{10} \\
(-10)!!! &=& -\frac{1}{28} \\
(-11)!!! &=& -\frac{1}{80}\\
(-13)!!! &=& \frac{1}{280} \\
(-14)!!! &=& \frac{1}{880}\\
\end{eqnarray*}
(-k)!!!=
\left\{
\begin{array}{l}
\frac{1}{k!!!} & (k=6n+1,6n+2) \\
-\frac{1}{k!!!} & (k=6n+4,6n+5) \\
発散 & (k=3n)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray*}
(-1)!!! &=& 1 \\
(-2)!!! &=& 1 \\
(-4)!!! &=& -1 \\
(-5)!!! &=& -\frac{1}{2} \\
(-7)!!! &=& \frac{1}{4} \\
(-8)!!! &=& \frac{1}{10} \\
(-10)!!! &=& -\frac{1}{28} \\
(-11)!!! &=& -\frac{1}{80}\\
(-13)!!! &=& \frac{1}{280} \\
(-14)!!! &=& \frac{1}{880}\\
\end{eqnarray*}
これを注意深く観察すれば、2より大きい自然数$k$と自然数$n$について
\begin{eqnarray*}(-k)!!!=
\left\{
\begin{array}{l}
\frac{1}{k!!!} & (k=6n+1,6n+2) \\
-\frac{1}{k!!!} & (k=6n+4,6n+5) \\
発散 & (k=3n)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray*}
となる。
負の整数のm重階乗
$m$は$m > 1$を満たす自然数とする。今までの議論と同様にして、負のm重階乗を考えることができる。
$k>3$に関して
\begin{eqnarray*}
(-k)!!!!=
\left\{
\begin{array}{l}
\frac{1}{k!!!!} & (k=8n+1,8n+2,8n+3) \\
-\frac{1}{k!!!!} & (k=8n+5,8n+6,8n+7) \\
発散 & (k=4n)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray*}
(-k)!!!!=
\left\{
\begin{array}{l}
\frac{1}{k!!!!} & (k=8n+1,8n+2,8n+3) \\
-\frac{1}{k!!!!} & (k=8n+5,8n+6,8n+7) \\
発散 & (k=4n)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray*}
$k>4$に関して
\begin{eqnarray*}
(-k)!!!!!=
\left\{
\begin{array}{l}
\frac{1}{k!!!!!} & (k=10n+1,10n+2,10n+3,10n+4) \\
-\frac{1}{k!!!!!} & (k=10n+6,10n+7,10n+8,10n+9) \\
発散 & (k=5n)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray*}
(-k)!!!!!=
\left\{
\begin{array}{l}
\frac{1}{k!!!!!} & (k=10n+1,10n+2,10n+3,10n+4) \\
-\frac{1}{k!!!!!} & (k=10n+6,10n+7,10n+8,10n+9) \\
発散 & (k=5n)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray*}
といった具合になる。
負の整数の1重階乗
\begin{eqnarray*}
(n-1)!=\frac{n!}{n}
\end{eqnarray*}
に$n=0$をいれると、
\begin{eqnarray*}(0-1)! &=& \frac{0!}{0} \\
(-1)! &=& \pm \infty
\end{eqnarray*}
となり、発散。続いて、$n=-1$を入れても、
\begin{eqnarray*}
(-1-1)! &=& \frac{(-1)!}{-1} \\
(-2)! &=& \mp \infty
\end{eqnarray*}
\begin{eqnarray*}
(-1-1)! &=& \frac{(-1)!}{-1} \\
(-2)! &=& \mp \infty
\end{eqnarray*}
0 件のコメント:
コメントを投稿
texが使えます。