\begin{align}
i^i=?
\end{align}
必要な知識
- オイラーの公式
- 実数のべき乗が$x^\alpha=e^{\alpha \log x}$で定義されていること
結論をかくと、
\begin{align}
i^i=e^{-\frac{\pi}{2}}
\end{align}
となる。
準備―複素数の対数関数の定義
一般の複素数$Z$に関して、$\omega = \log Z$を指数関数の逆関数として定義する。一般の複素数$Z$を極形式で書くことを考えれば、複素数の周期性から
\begin{align}
Z=re^{i\theta}=re^{i(\theta +2n\pi )}
\end{align}
と書くことができて、対数関数の性質に気をつければ
\begin{eqnarray*}
\omega=\log Z= \log re^{i(\theta +2n\pi)} = \log r + i\theta + 2n\pi i
\end{eqnarray*}
とかける。いずれの式も、$n \in \mathbb{Z}$である。ここで最右辺第一項は実数の対数であり、高校の教科書で既に定義されている。このようにして、複素数の対数関数は定義できた。ただし、最右辺第三項により、無限に$\omega$が定まる。
そこで、$-\pi < \theta \leq \pi$とし、n=0とした場合の $\omega$の値を主値と呼び、$\mathrm{Log}\ Z$と書く。
証明
複素数の世界で、べき乗は実数の場合と同様に(実数の場合、べき乗は$x^\alpha=e^{\alpha \log x}$と定義されている)次のように定義される。
\begin{eqnarray*}
z^{\alpha}=e^{a \log z}
\end{eqnarray*}
ここで、$\alpha$は一般の複素数、$z$は0でない複素数とした。この定義に$z=\alpha=i$を代入して、
\begin{eqnarray*}
i^{i}&=&e^{i \log i}\\
&=&e^{i\log (e^{\pi i/2+2n\pi})} \\
&=&e^{-\pi/2-2\pi n} (n \in \mathbb{Z})
\end{eqnarray*}
よって、
\begin{eqnarray*}
i^i=e^{-\frac{\pi}{2}},e^{-\frac{5\pi}{2}},e^{-\frac{9\pi}{2}},\dots
\end{eqnarray*}
と無数にあることが分かる。主値をとれば
\begin{eqnarray*}
i^i=e^{-\frac{\pi}{2}}
\end{eqnarray*}
となる。いずれにせよ、$i^i$が実数になるというのは興味深い。
ちなみに、左辺は
\begin{eqnarray*}
e^{-\frac{\pi}{2}}=0.207879576...
\end{eqnarray*}
と無限に続く小数である。
よくある誤った証明
インターネット上では、以下の証明が出回っている。
オイラーの公式
\begin{align}
e^{i\theta}=\cos \theta + i \sin \theta
\end{align}
に
\begin{align}
\theta=\frac{\pi}{2}
\end{align}
を代入すれば、
\begin{eqnarray*}
e^{i\frac{\pi}{2}}&=&\cos \frac{\pi}{2} + i \sin \frac{\pi}{2}\\&=&i
\end{eqnarray*}
となる。両辺を$i$乗して、
\begin{eqnarray}
e^{-\frac{\pi}{2}}=i^i
\end{eqnarray}
よって、$i^i$は求められた。
以上の証明は間違い。というのも、指数が複素数の場合、一般には指数法則は成立しない。よって、両辺を気安く$i$乗するのが(今回はたまたま問題なかっただけで)よくない。
0 件のコメント:
コメントを投稿
texが使えます。