2015年3月15日日曜日

逆三角関数の導入 アークサイン,アークコサイン,アークタンジェント

三角関数の逆関数を逆三角関数と言います。本稿では高校生の知識のみで逆三角関数を導入します。


必要な知識
- 逆関数についての基本的な性質(詳細
- 三角関数
- 弧度法


$x=a$で$y=b$になるような関数にたいして、$x=b$で$y=a$となる関数を逆関数というのでした。逆関数の意味や基本的な性質についてはこちらを参考(クリック)。

まずは$y=\sin x$の逆関数を導入しよう。正弦関数は$x$に$\frac{\pi}{6}$をいれれば、$\frac{1}{2}$が定まり、$x$に$\frac{\pi}{2}$をいれれば、$1$が求まる。


逆関数とはこの向きを逆さまにした関数をいうから、$x$に$\frac{1}{2}$をいれたら、$\frac{\pi}{6}$が求まり、$x$に$1$をいれたら、$\frac{\pi}{2}$が求まる関数が、$y=\sin x$の逆関数と言える。これを、$y=\arcsin x$と書く。

ただし、$\arcsin x$を$\sin^{-1}x$と書くこともある。関数$f(x)$の逆関数を$f^{-1}(x)$と書くことから、この記法は自然だが、これでは$\sin^{-1}x$が$\sin x$の逆関数なのか、それとも逆数なのか分からない。そのため、個人的にはこの記法は好きではない。


ところで上の定義で導入した$\arcsin x$に一つ問題が生じる。関数というのは、値を与えた時、ただ一つの値を返すものであった。実はこのままでは、$\arcsin x$は、返す値が1つには定まらない。というのも、$\sin x=\frac{1}{2}$を満たす$x$は$x=\frac{\pi}{6}$だけでないからだ。$x=\frac{5}{6}\pi,\frac{13}{6}\pi$なども$\sin x=\frac{1}{2}$を満たす。このため、たとえば$\arcsin \frac{1}{2}$を考えるとき、この値は
\begin{equation}
\arcsin \frac{1}{2} = \frac{1}{6}\pi, \frac{5}{6}\pi,\frac{13}{6}\pi, \dots
\end{equation}
などと一つに定まらない。そこで、関数として値をただ一つに定める為に、$y=\sin x$の定義域が$-\frac{\pi}{2} \leq x \leq \frac{\pi}{2} $であるときに$\arcsin x$を定義するとしよう。こうした制約を与えることで(この制約を主値をとるなどと表現する)
\begin{equation}
\arcsin \frac{1}{2} = \frac{1}{6}\pi
\end{equation}
と値は一つに定まる。


このように定義した$y=\arcsin x (-1 \leq x \leq 1)$をグラフにすると次のようになる。

$y=\arcsin x$が$y=\sin x$と$y=x$で対称になっているか確認しよう。逆関数ともとの関数というのは$y=x$で対称であった。


確かに、$y=x$で対称になっている。

以下、同様にして、$y=\cos x$の逆関数$y=\arccos x$や、$y=\tan x$の逆関数$y=\arctan x$が定義される。これらも$x$を与えた時に値が1つに定まるように適切な定義域を採用される。

これらのグラフは以下の通り。
$y=\cos x$の逆関数$y=\arccos x$

$y=\tan x$の逆関数$y=\arctan x$



逆三角関数を用いることで、積分の計算が容易になるなど、メリットは多い。
逆関数の微積分や関係式は稿を改める。

$\arctan$の応用として、Machinの公式の記事を参考にされたい(詳細)。

練習問題

次の値を求めよ。
(1) $\arcsin \frac{1}{2}$
(2) $\arccos 1$
(3) $\arctan \frac{1}{\sqrt{3}}$


答え

いずれも逆三角関数の定義域に注意して、
(1)
$y = \arcsin \frac{1}{2} \Leftrightarrow \sin y=\frac{1}{2}$ これを満たす$y$は$y=\frac{1}{3}\pi$

(2)
$y = \arccos 1 \Leftrightarrow \cos y=1$ これを満たす$y$は$y=\frac{\pi}{2}$

(3)
$y = \arctan \frac{1}{\sqrt{3}} \Leftrightarrow \tan y=\frac{1}{\sqrt{3}}$ これを満たす$y$は$y=\frac{\pi}{6}$

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