$\sin x + \sin 2x + \sin 3x + \dots + \sin nx $と計算していくと、以下のようになることが知られている。
\begin{align}
\sum_{k=1}^n \sin k\theta = \frac{\sin \frac{n \theta}{2} \sin \frac{(n+1)\theta}{2}}{\sin \frac{\theta}{2}} \end{align}
ここでは、
\begin{align}
\sum_{k=0}^n \cos k\theta = \frac{\cos \frac{n \theta}{2} \sin \frac{(n+1)\theta}{2}}{\sin \frac{\theta}{2}} \end{align}
とあわせて証明してみよう。
必要な知識
- 等比数列の和の公式、総和の扱い方など数学Bの「数列」で学習する一通りの知識
- 三角関数の倍角、和積、積和公式など数学IIの「三角関数」にある基本的な公式
- オイラーの公式
証明の指針
等比数列の和の公式
\begin{equation*} { 1+z+z^2+z^3+ \dots + z^n = \frac{1-z^{(n+1)}}{1-z}} \end{equation*}
は、zが複素数でも用いることができる。
証明したい式の左辺は
\begin{align} \def\Re{{\rm Re\,}} \def\Im{{\rm Im\,}} \sum_{k=0}^n \cos k\theta = \sum_{k=0}^n \Re(e^{ik\theta}) = \Re\left(\frac{1-z^{(n+1)}}{1-z}\right) \\ \sum_{k=0}^n \sin k\theta = \sum_{k=0}^n \Im(e^{ik\theta}) = \Im\left(\frac{1-z^{(n+1)}}{1-z}\right) \end{align}
と書けることに注目する。まずは、
\begin{equation*} (1-z^{n+1})(1- \overline{z}) \end{equation*}
つまり、
\begin{equation*} =(1-e^{i(n+1)\theta})(1-e^{-in\theta}) \\ \end{equation*}
を考えよう。これを計算して
\begin{align}
=\{1-\cos \theta - \cos (n+1)\theta + \cos n\theta \} + i\{\sin \theta - \sin (n+1)\theta + \sin n\theta \}\\
\end{align}
倍角の公式と積和・和積公式に注意すれば、
\begin{equation*}
=2\sin \frac{\theta}{2} \left\{ \Bigl( \sin \frac{\theta}{2} + \sin \left( \frac{2n+1}{2} \theta \right)\Bigr) + i\Bigl( \cos \frac{\theta}{2}-\cos \left( \frac{2n+1}{2} \theta \right) \right\} \\
=4\sin \frac{\theta}{2} \left\{ \cos \frac{n\theta}{2} \sin \frac{(n+1)}{2}\theta + i \sin \frac{n\theta}{2} \sin \frac{(n+1)}{2}\theta \right\}
\end{equation*}
となる。ここで[tex: {|1-z|^2}]を考える。
\begin{eqnarray*}
\left|1-z\right|^2
&=&|1-\cos \theta - i \sin \theta|^2 \\
&=&(1-\cos \theta)^2 + \sin^2 \theta \\
&=&2(1-\cos \theta) = 4\sin^2 \frac{\theta}{2}
\end{eqnarray*}
ここで、計算しておいた
\begin{equation*} (1-z^{n+1})(1- \overline{z}) \end{equation*}
を、[tex: {|1-z|^2}]で割る。そうすれば、
\begin{eqnarray*}
\Re \left(\frac{1-z^{(n+1)}}{1-z}\right) &=&
\Re \left( \frac{4\sin \frac{\theta}{2} \left\{ \cos \frac{n\theta}{2} \sin \frac{(n+1)}{2}\theta + i \sin \frac{n\theta}{2} \sin \frac{(n+1)}{2}\theta \right\}}{4\sin^2 \frac{\theta}{2}} \right )\\
&=&\frac{\cos \frac{n \theta}{2} \sin \frac{(n+1)\theta}{2}}{\sin \frac{\theta}{2}}
\end{eqnarray*}
となる。同様にして、
\begin{eqnarray*}
\Im \left(\frac{1-z^{(n+1)}}{1-z}\right) = \frac{\sin \frac{n \theta}{2} \sin \frac{(n+1)\theta}{2}}{\sin \frac{\theta}{2}}
\end{eqnarray*}
よって、上の二つの式は示された。
ちなみにこの式が便利かどうかは知りません。この証明は複素関数論の教科書の演習問題によく出てくるけれども、私は使ったことは一度もない。
(4)の二つ下の式間違えてますよ
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